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習い事が勉強の邪魔にならない?学力向上に繋がる両立の秘訣と注意点

毎日のお子さんのスケジュール管理、本当にお疲れ様です。学校が終わってからランドセルを玄関に置き、息つく暇もなく習い事のバッグを持って飛び出していく我が子の背中を見ていると、「こんなに忙しくて、勉強する時間はあるのだろうか」と不安になることはありませんか。

特に学年が上がり勉強の内容が難しくなってくると、テストの点数や宿題の進み具合を見て、「そろそろ習い事を整理した方がいいのかもしれない」と悩む保護者の方は非常に多いです。

しかし、結論を急いで習い事を辞めさせてしまうのは少しもったいないかもしれません。実は、適切な関わり方と時間の使い方さえ工夫すれば、習い事は勉強の邪魔になるどころか、むしろ学力を底上げする強力なブースターになり得るからです。

もし今、あなたが「勉強と習い事、どちらを取るべきか」という二者択一で悩んでいるのなら、まずは「どうすれば両立できるか」という視点に切り替えてみませんか。多くの子供たちを見てきましたが、成績優秀な子ほど、実は高学年までスポーツや芸術活動に打ち込んでいるケースが珍しくありません。

この記事でわかること

習い事が勉強へ与えるポジティブな影響と科学的根拠

多くの保護者が懸念するのは「習い事のせいで勉強時間が減る」という物理的な時間の減少ですが、実はそれ以上に「習い事によって得られる能力」が勉強に還元される側面は見逃せません。ここでは、習い事が直接的・間接的に学習へどのような好影響を与えるのか、脳科学や心理学的な視点も含めて解説します。

集中力とタイムマネジメント能力の向上

習い事をしている子供は、していない子供に比べて「自由な時間」が圧倒的に少なくなります。一見するとこれはデメリットのように感じられますが、限られた時間の中で課題をこなさなければならない環境は、子供のタイムマネジメント能力を劇的に向上させるチャンスでもあります。

例えば、火曜日と木曜日にサッカースクールがある場合、その日は帰宅後の2時間しか自宅にいる時間が確保できないとしましょう。だらだらとテレビを見て過ごせば宿題は終わりませんが、「この2時間で宿題と明日の準備を終わらせないとサッカーに行けない」という制約があることで、子供は驚くべき集中力を発揮します。これは「締め切り効果」と呼ばれるもので、時間が潤沢にある時よりも短時間で質の高い学習が可能になるのです。

実際に、何も予定のない休日は昼までパジャマで過ごしてしまい結局勉強しなかったという経験はありませんか。逆に、予定が詰まっている日の方が、朝のうちにやるべきことをテキパキと終わらせられたという経験を持つ方は多いはずです。習い事という「強制的な予定」があることで、生活にメリハリが生まれ、机に向かった瞬間の集中の深さが養われます。この「短時間でスイッチを入れる力」こそが、受験期などの高負荷な学習環境で大きな武器となります。

非認知能力(グリット・自制心)の育成と学習への転用

近年の教育界で注目されている「非認知能力」をご存知でしょうか。IQや偏差値といった数値化できる能力(認知能力)に対し、忍耐力、自制心、やり抜く力(グリット)などを指す言葉です。習い事は、まさにこの非認知能力を鍛える最高の実践の場と言えます。

ピアノの発表会に向けて難しい曲を何度も練習したり、剣道の試合で負けた悔しさをバネに稽古に励んだりする経験は、机上の学習だけでは得られない心のタフさを育てます。算数の難問に直面した時、「わからないからすぐに答えを見る」のではなく、「もう少し粘って考えてみよう」と思える粘り強さは、スポーツや芸術の練習で培った「できないことができるようになる喜び」を知っているからこそ発揮されるものです。

ある水泳選手のお子さんの例ですが、タイムが伸び悩みスランプに陥った時期がありました。しかし、そこで腐らずにフォームの改善に取り組んだ経験が、中学受験の模試でE判定を取った時の精神的な支えになりました。「水泳の時と同じで、基礎を見直せば必ず結果は出る」と信じて勉強を継続し、見事第一志望に合格されたのです。このように、習い事で培ったメンタルは、そのまま勉強への姿勢にスライドして活用することができます。

脳の活性化とリフレッシュ効果

勉強と習い事は脳の異なる部分を使うため、良い相互作用を生み出します。ずっと座って計算や暗記を続けていると、脳の前頭前野が疲弊し、学習効率は著しく低下します。しかし、ここで体を動かすスポーツや、指先と感性を使う楽器演奏などを挟むことで、脳の疲労が分散され、リフレッシュ効果が得られます。

特に運動系の習い事は、血流を良くし、脳への酸素供給量を増やします。ハーバード大学医学部のジョン・レイティ博士の研究でも、有酸素運動が脳のニューロンを増やし、記憶力や学習能力を高めることが示唆されています。つまり、勉強の合間にスイミングやダンスに行くことは、単なる時間の浪費ではなく、脳を「学習に適した状態」に整えるメンテナンスのような役割を果たしているのです。

また、学校や家庭とは別の「第三の居場所(サードプレイス)」を持つことは、精神的な安定にもつながります。学校で嫌なことがあったり、親に叱られて落ち込んだりしても、習い事の仲間や先生と接することで気持ちが切り替わり、自己肯定感を保てるケースは多々あります。心が安定していなければ質の高い学習はできませんから、精神衛生上のメリットも計り知れません。

成績が下がる場合の共通点と親が陥りやすい罠

成績が下がる場合の共通点と親が陥りやすい罠

ここまで習い事のメリットをお伝えしましたが、もちろん「習い事のせいで成績が下がってしまった」というケースも現実に存在します。しかし、それは習い事そのものが悪いのではなく、取り組み方や親のサポート方法に問題がある場合がほとんどです。ここでは、両立に失敗してしまう家庭の共通点を見ていきましょう。

移動時間と身体的疲労の考慮不足

習い事の拘束時間は、レッスン時間だけではありません。「準備」「移動」「レッスン後の着替え」「帰宅」を含めたトータルの時間を計算に入れていますでしょうか。特に都心部などで、片道30分以上かけて通う習い事を複数抱えている場合、子供は移動だけで週に何時間も消耗していることになります。

よくある失敗例として、学校から帰宅してすぐにおやつをかき込み、バスに揺られてスポーツクラブへ行き、ヘトヘトになって19時過ぎに帰宅。そこから夕食とお風呂を済ませるともう21時、というパターンです。この状態で「さあ、宿題をやりなさい」と言っても、子供の体力は限界を超えています。結果として、机に向かっても舟を漕いでしまい、何も頭に入らないまま時間だけが過ぎていく「空回りの学習」になってしまいます。

親御さんは「行けばなんとかなる」と思いがちですが、子供の体力には限りがあります。特に高学年になると学校の授業時間も増えるため、低学年の頃と同じ感覚でスケジュールを組んでいると、知らず知らずのうちに慢性的な睡眠不足や疲労の蓄積を招き、学校の授業中に居眠りをしてしまうという本末転倒な事態になりかねません。

「辞めさせる」を脅し文句に使っている

テストの点数が悪かった時、つい「そんな点数を取るなら、サッカーなんて辞めさせますよ!」と感情的に叱ってしまったことはありませんか。実は、この言葉は子供の学習意欲を削ぐ最も危険なフレーズの一つです。

子供にとって大好きな習い事を人質に取られることは、恐怖や反発心を生むだけで、勉強への内発的な動機づけ(自分からやりたいと思う気持ち)にはつながりません。「勉強しないと習い事を奪われる」という状況では、勉強が「罰を避けるための嫌な作業」として脳にインプットされてしまいます。これでは、一時的に机に向かうポーズはとるかもしれませんが、知識を吸収しようとする意欲は失われてしまいます。

また、親が一方的に「勉強の方が大事だ」という価値観を押し付けることで、子供は「お母さんは僕の頑張り(習い事での努力)を認めてくれていない」と感じ、信頼関係が崩れる原因にもなります。成績が下がった時にすべきは、習い事を辞めさせることではなく、「習い事を続けながら成績を戻すにはどういう工夫が必要か」を親子で膝を突き合わせて話し合うことです。

家庭学習と習い事を無理なく両立させる実践テクニック

では、具体的にどのようにすれば、忙しい日々の中で勉強時間を確保し、両立させることができるのでしょうか。精神論ではなく、今日から実践できる具体的なスケジュール管理術や環境作りのテクニックを紹介します。

15分単位の「スキマ時間」を可視化する

「まとまった勉強時間が取れない」と嘆く家庭の多くは、1時間や2時間といった大きな単位で時間を探そうとしています。しかし、習い事で忙しい子供にとって、平日にまとまった自由時間は存在しません。勝負は「10分〜15分のスキマ時間」をいかに拾い集めるかにかかっています。

以下の表は、スキマ時間を活用できている家庭とそうでない家庭のスケジュールの違いを整理したものです。

時間帯NGな過ごし方OKな過ごし方(スキマ活用)
朝食前ギリギリまで寝て、慌てて準備15分だけ計算ドリル・漢字練習
学校から帰宅後とりあえずテレビ・ゲームで休憩おやつを食べながら宿題を1つ完了
習い事への移動ボーッと外を眺める・スマホ車内や電車で社会の暗記カード
習い事から帰宅後疲れてダラダラ過ごすお風呂前の15分で翌日の準備と音読

このように、一つ一つは短い時間でも、積み重ねれば1日1時間以上の学習時間を捻出できます。ポイントは「いつ」「何を」やるかをあらかじめ決めておくことです。「空いた時間に勉強しなさい」ではなく、「朝ご飯の前に計算ドリルを1ページ」「移動の車の中で歴史人物を3人覚える」というように、行動を具体的にセット(If-Thenプランニング)しておくことで、子供は迷わずに取り組むことができます。

親のサポートは「教える」ことより「段取り」に徹する

忙しい子供にとって最大の敵は「次に何をすればいいか考える時間」と「教材を探す時間」です。習い事から帰ってきて、疲れた頭で「今日の宿題は何だっけ?」「プリントはどこだっけ?」と探しているうちに、やる気はどんどん削がれていきます。

ここで親ができる最高のサポートは、勉強の中身を教えることではなく、子供がすぐに勉強に取り掛かれる環境を整えてあげる「段取り」です。具体的には、習い事に行っている間に、その日やるべき宿題やドリルを机の上に広げておき、鉛筆も削っておく。ページを開いておくだけでも効果は絶大です。

帰宅した子供は、座ればすぐに課題に取り組める状態になっているため、心理的なハードルが下がります。「お母さんが準備しておいてくれたから、これだけやっちゃおう」と思わせれば勝ちです。高学年になれば自分で管理させるべきですが、習慣がつくまでは、この「環境のセットアップ」を親が黒子となって行うことで、スムーズな学習開始を促すことができます。

これが出たら要注意!見直しが必要な危険サイン

いくら工夫しても、どうしてもキャパシティオーバーになってしまうことはあります。無理をして両方とも共倒れになってしまっては元も子もありません。子供が発している以下のようなサインを見逃さず、勇気を持って「休会」や「回数を減らす」決断をすることも、親の重要な役割です。

「好き」が「義務」に変わっていないか確認する

最も注意深く観察すべきなのは、子供の「目の輝き」です。習い事を始めた当初は楽しそうに通っていたのに、最近は「行きたくない」と漏らしたり、帰宅後の表情がどんよりしていたりしませんか。もし、習い事が単なる「こなすべきタスク(義務)」になり、ストレスの源になっているようであれば、一時撤退を検討するタイミングです。

特に、親の期待に応えようとする優しい性格の子ほど、本当は辞めたいのに言い出せず、心身ともに疲弊してしまうことがあります。「最近、少し疲れてない?」「もし大変なら、少しお休みしてもいいんだよ」と、逃げ道を用意してあげてから本音を聞き出してみてください。一時的に休むことでエネルギーが回復し、また勉強にも習い事にも前向きに取り組めるようになるケースは少なくありません。

よくある質問(FAQ)

中学受験をする場合、習い事はいつまで続けられますか?

一般的には、通塾の日数が増える小学5年生の終わりから6年生の夏頃に、一時休会や整理をする家庭が多いです。しかし、最後まで週1回のペースで続けてリフレッシュの時間として活用し、難関校に合格するお子さんもいます。重要なのは「子供自身がどうしたいか」です。「受験が終わるまで休む」と本人が納得して決めたなら良いですが、無理やり辞めさせるとモチベーション低下につながるため、6年生のスケジュールの空き状況を見ながら話し合って決めることをおすすめします。

スポーツ系と文化系、どちらが勉強との両立に有利ですか?

どちらにもメリットがあり、一概に有利不利はありません。スポーツ系は体力と忍耐力がつき、受験直前期のハードな生活を乗り切る基礎体力が養われます。一方、ピアノや将棋などの文化系は、論理的思考力や集中力、指先の巧緻性が高まり、学習内容の理解を助けます。子供が「夢中になれるもの」であれば、ジャンルに関わらず脳や精神へのプラス効果は期待できます。

週に何回くらいが限界の目安ですか?

学年や通塾の有無によりますが、高学年で学習塾に通っている場合、習い事は週1〜2回程度に抑えるのが現実的です。学校の宿題、塾の宿題、そして睡眠時間を確保した上で、自由時間が全くなくなるようなスケジュールは危険です。週に1日は「何もしなくていい日(完全オフ)」を作るなど、子供がボーッとして脳を休める時間を確保できる範囲で調整してください。

まとめ

習い事と勉強の両立は、決して簡単なことではありません。しかし、それを乗り越える過程で身につく「時間の使い方」「集中力」「困難に立ち向かう精神力」は、将来社会に出た時に、テストの点数以上に役立つ一生の財産となります。

親御さんが焦って「どちらか一つ」に絞らせようとするのではなく、まずは子供の「やりたい」という気持ちを尊重し、どうすれば両立できるかを作戦会議のように一緒に考えてみてください。15分のスキマ時間の積み重ねや、親のちょっとした段取りのサポートで、子供の可能性は驚くほど広がります。

子供が笑顔で習い事に行き、帰ってきたその集中力で勉強にも励む。そんな充実した日々を送れるよう、今日からできる小さな工夫を始めてみましょう。その頑張りは、必ず子供の成長という形で返ってくるはずです。